第一章 雨の日の出会い

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***  その日から、かすみと男性は親しく言葉を交わすようになった。康司の存在を心配してくれて、毎朝一緒に通勤した。  「おはようございます」  「おはよう。コーヒー持ってきたんだ。飲んでね」  彼の手には、お気に入りというブランドの袋があった。  「でも……いつも、もらってばかりで」  かすみが遠慮すると、直弥は笑いながら言ってきた。  「それなら、今度()れてほしいかな。休みの日に行っていい?」  彼が部屋に来る。かすみは鼓動が速くなった。でも、返事は一つだった。  「はい、もちろん。いつがいいですか?」  ()かれた直弥は少し考えてから答えてきた。  「今月最後の日曜はどうかな。その頃なら用事も終わってるから」  「お忙しいんですね。大丈夫ですか?」  心配するかすみに直弥は笑った。  「ありがとう。でも、大丈夫。  今日は何時に終わるのかな」  「え……と、多分、定時だと思うんですけど」  「そうなんだ。それだったら迎えに行けるから、夕食、家でどう?」  「いいんですか」  直弥は料理が上手だった。独り暮らしが長いだけだと、かすみが()めた時に彼は笑った。  「うん。かすみが一緒なら、張りきって作るから、楽しみにしてて」  本当に楽しみだった。
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