第一章 雨の日の出会い

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 かすみは、彼の名前以外はほとんど知らない。  七階に住んでいて、室内を綺麗にできる男性。そして、かすみの出勤に合わせて通える会社で働いている程度だ。  でも、彼がどんな人かは少し詳しくなった。  料理が上手でコーヒーが好き。でも、少し猫舌で、コーヒーにはミルクを入れる。淡い青色が好きで、部屋もその色で統一している。かすみが彼をイメージした色……  恋人に捨てられたばかりのかすみは、今は男性に深入りしたくなかった。なので、直弥に対しても、必要以上に近づかなかったし、何も()かなかった。  彼が何者でも構わなかった。かすみに寄りそって一緒に歩いてくれる短い時間。そして、手料理をふるまってくれる時間。それだけで彼女は満足だった。
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