第二章 雨の夜の告白

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 本当に来るのか、かすみは半分(あきら)めていた。仕事なら無理を言えないし、直弥の連絡先も知らない。かすみは待つだけ。それでも、当日まで待ちたかった。  雨の金曜日……彼女が色鉛筆を落として、直弥が最後の一本を拾ってくれたのも、同じ金曜日。  その日と同じように雨が降っていた。予報では強い降りになるということだった。  かすみは、防水の効いたコートを着て会社に向かった。足元には青いレインブーツ。水しぶきに気をつけながら、駅まで歩いて列車に乗った。雨の匂いが車内にまで入り込んでいた。
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