第二章 雨の夜の告白

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 帰る時も雨だった。朝よりも強く感じられた。水色の傘を差して帰宅する。予報を見ていたから、晴れた木曜日に少し食料を買い込んだ。  土曜日の朝まで降る予報だったので、今日は早く帰りたかった。一人は寂しい……雨の夕暮れは、余計に寂しさを(つの)らせる。  駅を降りて少し急ぎ足で歩いた。レインブーツだから、道路に水たまりができていても大丈夫。帰ったら、ホットレモネードをまず飲みたいと思った。  「かすみ」  名前を呼ばれて振り返ったかすみは後悔した。康司だった。かすみは、彼の声も忘れていた。直弥の、雨のような優しい声に康司の記憶は消されていた。彼が言ってくれたように、かすみには、もう過去の人だ。  「もう会いたくないって言ったはずだけど」  かすみの声が少し厳しくなった。今は、会えない直弥が気になっている。他の……自分を捨てておきながら、付きまとってくる男になど関わっていられない。  「分かってる。でも、会いたかったんだ。あの時の謝罪も含めてさ」  「謝らなくていいよ。他に好きな人ができるのは悪いことじゃないから」
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