第二章 雨の夜の告白

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 「もう好きじゃないよ。愛してないし。あんなことされて、いつまでも好きでいるって、どうして思えるの?」  「それは……悪かった。詐欺師みたいな女に引っかかんだ。(だま)されただけだから(ゆる)してくれよ」  「詐欺師って……そんな相手でも付き合ってたんでしょ。そういう表現は自分を下げるだけだと思うけど」  かすみは容赦なかった。今日で本当に縁を切りたかった。直弥との約束は明後日。その日まで彼のことだけを考えたい。  彼女の言葉に康司は嫌そうに説明を始めた。かすみは聞きたくもないのに……  「……それって、結局、自分が勝手に引っかかっただけじゃない。私、無関係でしょ」  聞き終わったかすみが呆れたように言った。  甘え上手な女が、同僚五人と並行で関係があっても、さらに上司とも不倫をしていても、かすみは興味がなかった。()めているなら余計に……  「俺、被害者じゃないか。騙されて恋人と別れて。可哀想だと思わないか」  「全然。どこが可哀想なのか分からない」
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