番外編2~雨に浮かぶ笑顔

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 考えても仕方ないので、二人を避けて入ろうとした。でも、どうしてか足が進まない。  困っているらしい女性を無視して、何か事件にでもなったら寝覚(ねざ)めが悪いと感じたのだろうか……  最近は物騒だから、自分の住むマンションで事件が起こらないとはとても言えない。万一カメラが入ってきたら、僕の静かな生活はここで終了になる。それは困る。  女性へ静かに声を掛けた。  「どうされました?」  僕の声に驚いたのか、女性が茫然(ぼうぜん)とした表情で振り返った。僕も茫然とした。  「あ……貴女は」  彼女だ。  僕が忘れられなかった女性。  このマンションに住んでいたなんて……  そして、彼女は僕と分かると、嬉しそうな表情を浮かべた。彼女も僕を(おぼ)えていたと知ると、すぐにマンションに入って事情を聞きたくなった。  なのに、玄関先にいる男性が、僕たちに気づいて近寄ってきた。彼女は男性を見ると、(かす)かに震えたのが分かった。なので、意識的に穏やかに(たず)ねた。  「どうしました?」  「別れた……恋人が……」  もしかしたら、夫かそれに近い男性ではと心配だったから、別れた恋人なら、全然問題ない。他人なら、僕と立場は変わらない。
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