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男性が僕を嫌そうに見てきたから、不愉快になったけど無視した。彼は、僕が女性の近くから動かないから、余計に嫌そうだ。
少し険悪な口調で尋ねてきた。
「誰ですか?」
「貴方こそ、どなたですか?」
相手のペースに合わせるわけにはいかない。訊き返した。男性は返されると思わなかったのか、一瞬、黙った後、意外なことを言ってきた。
「彼女の……かすみの恋人ですよ」
え……別れたんじゃ……
でも、その言葉を聞いた彼女は僕に説明してきた。必死の表情が可愛い。
「違う……違うんです。この人、もう別の相手がいるんです」
なるほど……別れたけど、やり直したいということか。
この女性相手なら、復縁を望むのは分かるけど、今さら遅いと思った。彼女に特定の相手がいないなら、もう我慢する必要はない。
何か言っている男性の言葉を流して、彼女を促してマンションへと歩きだした。そんな男性と話すほど時間の無駄はないと思う。
苛立ちながら止める声を聞いた僕は振り返って、諦めてもらうように告げた。
「彼女は過去にしようとしている。それをかき乱す権利は貴方にはないはずです」
「……っ」
黙った彼をそのままにして、僕は彼女とマンションに入った。雨が降っているから、諦めて帰るだろう。もう、この女性は君の恋人ではない。
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