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「ありがとうございます。私、一人なら、どうなっていたか……」
ホッとしたようにお礼を言ってくる彼女に、僕はさりげなく確認した。一緒に入ったから間違いないと思うけど、男性から逃げたい一心でついてきた可能性もある。
「良かったです、役に立てて。貴女はこのマンションに住んでいらっしゃるんですね」
「ええ」
その返事は、僕に、夢ではないかと思うほどの喜びを感じさせた。
でも、少し後悔した。初めて会った日に送ると言えば、同じマンションに住んでいると分かったのに。そうなれば、もっと早く距離を近づけることができたのに。
それでも知ったのだから、もう逃がす気持ちはなかった。こんな偶然、絶対に運命だ。
どうやって近づこうか。
女性はスイーツが好きだけど、僕はあまり好きではない。それなら、ドリンクから攻めようか。
まず、コーヒーで。飲まないなら紅茶にすればいい。紅茶だって飲む。部屋には茶葉もある。だいたいの女性はどちらかを飲むはず。
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