第二章 雨の夜の告白

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 ***  店を出て傘を開いた。雨は強く降っていて、傘を(はじ)く音が可愛く聞こえてくる。  かすみは、嫌な再会を忘れるように傘を差して歩いた。もう、康司は付きまとってこない。  それでも、かすみは直弥に会いたかった。康司のことは関係なく一緒に雨を見たかった。溜息をつきながらマンションへ向かった。  かすみの住む地区は、他のマンションも立ち並んでいる。なので、公園がその中にあった。あまり大きくない公園だけれど、桜の木が植えられていて、開花の季節はとても綺麗だ。  毎年、花が咲く時季になると、かすみは必ずその公園を通って会社への往復をした。今は、もう花は終わっている。緑色の葉が少しずつ色づき始める季節も、もうすぐだ。  久しぶりに公園を見たいと、かすみは思った。雨に沈む公園を見ながら部屋へ帰りたい。嫌な会話を忘れたくて、少し遠回りしたい気分だった。  雨の公園は水たまりができて、そこに雨粒が跳ねている。通り抜けようとしたかすみは人影に気づいた。  (え、雨なのに)  ベンチに誰かが座っているのが分かった。屋根がないからずぶ濡れになる。誰かは分からないけれど、かすみは心配になった。
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