第二章 雨の夜の告白

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 不審者かもしれないとは思ったけれど、無視はできない。  少しずつ近づいていって、かすみは息を飲んだ。傘が手から離れてベンチへと転がっていった。  「かすみ……」  直弥だった。傘も差さずにレインコートも着ていない。濡れて真っ青な顔色になっているのを見て、かすみは(あわ)てて近づいた。  「直弥さん……どうして、こんな……」  彼の身体に触れると、かすみはもう一度息を飲んだ。氷のように冷えきっていた。事情を知りたいけれど、今は身体を温めないと大変なことになる程度は分かった。  かすみは直弥を立たせると、傘を拾ってから彼と一緒に歩きだした。今さら傘を差しても、という気持ちだけれど、これ以上、濡れてほしくなかった。  このまま彼を七階には送れない。かすみは、自分の部屋に直弥を連れていった。
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