3250人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
そして、ホットレモネードの準備をした。身体の中からも温めてほしかった。部屋の温度も少し上げた。
待っていると、直弥がリビングのドアを開けて入ってきた。温まったからなのか、少し顔色が良くなっていた。安心したかすみは、ホットレモネードの入ったカップを直弥に渡した。
「少し熱いから気をつけてね。ホットレモネードよ」
「……ありがとう……」
言いながら直弥は素直にカップを受け取ると、軽く息を吹きかけながら少しずつ飲みだした。身体が温まったらしく、小さく息をついた。
彼が猫舌だとは知るけれど、身体が冷えている時だから、かすみは熱めのまま渡した。正しかったと思えると安心した。
かすみは、急いでバスルームに向かった。出てくると、直弥はホットレモネードを飲み終えていた。
二人の間に中途半端な沈黙が落ちた。かすみは、直弥に何があって、ずぶ濡れになったのか知りたかったけれど黙っていた。
直弥に、雨に濡れても動けないほどのことが起こったのは分かる。少し親しくなった程度のかすみに、尋ねていいのかためらわせた。
最初のコメントを投稿しよう!