第二章 雨の夜の告白

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 その時、直弥が小さな声を上げた。彼が、一点に視線を向けたことに気づいたかすみは、同じ方向を見て真っ赤になった。  雨をイメージした彼の似顔絵だった。  「僕が……」  彼に何も言わないで描いて飾っていたことを、かすみは(あわ)てて謝った。  「ごめんなさい。許可も取らないで勝手に描いて……」  でも、直弥は立ちあがると絵に近づいて、おそるおそる触れてきた。  「すごく優しそうだ。かすみは美化しすぎだよ」  その言葉はすぐに否定できた。  「そっくりよ。直弥さんはこういう人だって……」  告白めいた言葉になって恥ずかしかった。絵を見れば、かすみが直弥に好意を持っているのはすぐに分かる。絵を見ていた直弥の瞳から、涙が流れて頬を伝った。  「直弥さん?」  近づいて涙を(ぬぐ)おうとすると、彼はかすみを抱き締めてきた。
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