第二章 雨の夜の告白

15/23

3250人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
 驚いたけれど、何か言いかけた彼をかすみも抱き締めた。初めて触れる彼の身体は冷えて感じられた。まだ、濡れた時に奪われた体温が完全には戻っていないと分かった。  「かすみ……温かい……」  直弥の声がくぐもって、かすみの耳に届いた。  「直弥さん……寒いの?だから悲しいの?」  寒ければ寂しくなる。なんとなく悲しくなる。かすみは遠回しに事情を(たず)ねた。  「寒い……確かに寒いよ。でも、もうすぐ感じなくなるんだ!」  「え?」  意味が分からなかった。とまどったことに気づいてくれたのか、直弥は、かすみの身体を離してソファに深く座り込んだ。かすみは隣りに座った。少しでも彼の近くにいたかった。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3250人が本棚に入れています
本棚に追加