第二章 雨の夜の告白

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 かすみは簡単に答えていた。自分の周期から考えて、昨日が危険だったのは分かっている。本当なら避妊を望まなければならない。彼女は持っている。  でも、分かりながら、かすみは無防備な状態の直弥を受け入れた。  迷子のような表情でベンチに座っていた直弥。事情を知り、かすみは本能に従った。愛する男性の子供を身籠(みごも)りたいと……  「そんなことじゃないよ。もし、妊娠したらどうするの?産むなんて無理なのに……」  後悔するような口調の直弥に、かすみは反論した。  「どうして無理って言うの。シングルマザーが嫌なら一緒に育てて。お願い。(あきら)めないで。私、直弥さんとずっと一緒にいる。今回妊娠しなくても関係ない。貴方といたいの」  一生懸命のかすみの言葉に、直弥は彼女の身体を包んだまま黙っている。  「一緒にいられるだけでいいの。それだけの願いも駄目?」  「かすみ。僕は余命半年って言われてる。もし、君が妊娠しても、多分、子供を見られない。僕には責任が取れない」
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