第二章 雨の夜の告白

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 ***  「一緒に暮らしてくれる?」  約束どおり、かすみの()れたコーヒーを飲みながら直弥は言ってきた。  かすみは頷いた。拒否する理由がない。二人は同じマンションに住んでいる。でも、違う階。少しの時間でも離れていたくなかった。  「私も直弥さんと一緒にいたい……」  少し恥ずかしそうに言うと、直弥は嬉しそうに微笑んだ。  その日のうちに二人は、かすみの荷物を七階へと移動させ始めた。  男性と暮らすのは、当たり前だけれど初めて。でも、ためらいはまったくなかった。ほとんど知らない相手だけれど、かすみは彼を受け入れた。子供が出来ることも願った。  そして、直弥は余命を宣告されている。時間を無駄にできない。  正式退去は一か月先になるけれど、その時まで住む必要はない。重複している家具や電化製品は、後でリサイクル店に引き取ってもらうことにした。  それ以外の荷物を二人で運び、土日の二日で、ほとんどの荷物は直弥の家に移った。  ()いている部屋に一時的に置いて、少しずつ片つけていく。急ぐ必要はなかった。
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