第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 日曜日の午後、一段落してコーヒーを飲みながら、二人はお互いのことを話していた。  「かすみって、お姉さんなんだ。そんな感じだね」  彼女に弟がいると聞いた直弥(なおや)が笑った。  二歳下の弟は昨年結婚して、同い年の義妹(いもうと)も働いている。普通の夫婦だ。両親も共働きだから、今の時代では平凡な家族だと思う。  「事務用品の会社って大変そうだね。いろんな品物ありそうだからさ」  直弥の感想に、今度はかすみが笑った。  「私のいる部署って、自社製品売ってるのよ」  「え、商事なんだよね」  かすみは頷いた。社名には商事が入っている。  「うん。でも、自社製品も少しだけ作ってるの。取次(とりつぎ)だけなら利益が出ないからって。あんまり多くないけど。私、その部署の営業事務なの。  でも、固定した売り上げあるのよ。お客さんに使いやすいって言ってもらってるし」  「そうなんだ。僕も買ってみるかな」  直弥が興味を持ってくれて、かすみは嬉しかった。
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