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距離を置きたそうなかすみに、直弥は横へ座ってきて腕に包んできた。
「周りは僕の家を知ってる人間だけだったから、寄ってくる女性って、それだけが目当てなんだ。
僕は次の総帥じゃない。だから、都合がいいって考える人間が多くて……後継者じゃないけど、贅沢はできるだろうってね。
そんな女性たちを避けたいって、素性を隠してこのマンションに住んだんだ。実家にいたら妻候補が途切れなくて、断るのも大変だったから」
「直弥さん……」
かすみには想像もできない世界だ。入りたいとも思わないけれど、望む女性が大勢いる程度は分かる。直弥が嫌になるのも……
「かすみが普通に話してくれて本当に嬉しかった。だから、かすみが僕の考えたとおりの女性だって知ったら、もっと近づきたいって。
でも、僕が霧山家の人間だって分かったら、きっと会ってくれなくなるって思ったら言えなかったんだ」
彼の言葉をかすみは否定できなかった。分かっていたらしい直弥は続けて話してきた。
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