第三章 雨傘に隠されていた素顔

5/24

3250人が本棚に入れています
本棚に追加
/330ページ
 距離を置きたそうなかすみに、直弥は横へ座ってきて腕に包んできた。  「周りは僕の家を知ってる人間だけだったから、寄ってくる女性って、それだけが目当てなんだ。  僕は次の総帥(そうすい)じゃない。だから、都合がいいって考える人間が多くて……後継者じゃないけど、贅沢はできるだろうってね。  そんな女性たちを避けたいって、素性を隠してこのマンションに住んだんだ。実家にいたら妻候補が途切れなくて、断るのも大変だったから」  「直弥さん……」  かすみには想像もできない世界だ。入りたいとも思わないけれど、望む女性が大勢いる程度は分かる。直弥が嫌になるのも……  「かすみが普通に話してくれて本当に嬉しかった。だから、かすみが僕の考えたとおりの女性だって知ったら、もっと近づきたいって。  でも、僕が霧山家の人間だって分かったら、きっと会ってくれなくなるって思ったら言えなかったんだ」  彼の言葉をかすみは否定できなかった。分かっていたらしい直弥は続けて話してきた。
/330ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3250人が本棚に入れています
本棚に追加