第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 ***  二人が同居して最初の土曜日、かすみは実家へと事情を説明に行った。突然、部屋番号が変われば、家族が心配する程度は分かっていた。  「引っ越しの理由なんだけど……」  かすみは、康司(やすし)に捨てられてから直弥と一緒に暮らすまでを、両親と弟夫婦に説明した。  もちろん、あの熱い夜は伏せていた。  でも、三十歳にあと数年の娘だ。交際相手ができれば、身体の関係になる程度は分かっていると思う。ただ、その相手が問題だというのは、かすみにも理解できた。  「……どの程度、真剣なんだ?」  父親が少し渋い表情で娘に()いてきた。かすみは即座に答えた。  「私はずっといたいと思ってる。  もちろん、霧山が普通の家でないのは知ってるし、直弥さんの身体を思ったら、このまま別れるのがいいくらいは私だって分かってる。  でも、そんなことできない。ずっと一緒にいたいの。  抗がん剤の治療が大変なのは、おばあさんを見てるから分かってる。逃げだしたいくらいだって……でも、奇跡が起こるかもしれないとも思ってるの。  いい病院で、最新の治療を受けるって言ってたから」
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