第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 家族は、かすみの言葉で、彼女の交際相手が、日本でも指折りの資産家の一員だと実感したようだ。  「かすみが決めたことだ。私たちが反対しても無駄だろう。もう成人してるからな……  でも、これだけは約束しなさい」  約束……何を言われるか、かすみは構えた。  「もし、相手を見るのが(つら)いと思ったら、その時はきちんと別れる。私たちは、おまえに辛い道を行ってほしくないんだ」  「お父さん……」  父親の横に座る母親が溜息をついた。  「経済力だけなら、正直、良縁だとお母さんも思うわ。娘にはお金で苦労してほしくないから。  でも、それ以上に苦しんでほしくないの。  再来年には三十歳でしょ?竹中(たけなか)さんと結婚すると思ってたのよね……」  かすみもそう思っていた。二股を知るまでは。
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