第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 「かすみがその人とどうしても離れたくないなら、お母さんたちが何を言っても聞かないでしょ?  お父さんの言ったこと守れるなら、お母さんも認めるわ。  好きって、どうしようもないものね……」  溜息交じりの声に、かすみは申し訳なかったけれど、それでも、直弥と離れる選択はできそうになかった。不可能だと分かっていても、かすみは約束した。  「約束する。見てるのが(つらい)くなったら、きちんと別れるから」  弟夫婦が、今まで見たことのない姉の強い雰囲気に驚いているのが分かった。  「姉さん。俺たち何もできないけど、話、聞くくらいならいくらでもできるからさ。遠慮しないで連絡くれよ」  横の義妹(いもうと)も同意するように頷いている。  弟たちの優しさに、かすみは泣きそうになったけれど我慢して笑みを返した。
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