第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 ***  両親は渋々賛成した。  でも、かすみは直弥にその部分は言わなかった。交際を認めてくれたと……彼は驚いていた。闘病中の男との交際を、家族が認めるとは思っていなかったのだろう。直弥の気持ちは分かる。  もし、かすみが報告を聞く立場なら、やっぱり賛成はできない。反対と言うかは分からないけれど。  だから、両親が、条件付きでも認めてくれたのは嬉しかった。そして、弟夫婦の励ましには素直に感謝していた。  治療が順調に進んだら直弥を家族に紹介したい。かすみは願った。  そして、直弥は次の週末に、かすみを自分の家族と会わせたいと言ってきた。  これから治療が始まる。  今のかすみは彼の家族ではない。  でも、直弥に何かあった時、かすみにも連絡が行くようにしたいと言ってくれていた。家族に紹介することで可能にしようとしたのだと分かる。  かすみに気づかってくれる彼を知るほど、余計に一緒にいる幸せを感じた。
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