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二人の生活が十日ほど経った頃、かすみの勤める本社に、関西支社から女性が出張してきた。
「花野、どうしたの?」
呼ばれた花野は、かすみに笑いかけた。
「どうしたの、じゃないわ。出張よ。部課長会議あるって聞いてない?」
「聞いてる。でも、本社だけかと思ってた」
かすみの言葉に花野は苦笑した。
「正しいんだけど、支社からも何人か呼ばれてるのよ。私、こっちに来年から復帰だから、挨拶代わりってこともあって」
「え、花野、やっと帰ってくるの?」
かすみと花野は同期入社だ。
それなりの大学の商学部を出て、一般職採用だったかすみに対して、一流大学の経済学部出身の花野は、女性初の総合職として華々しく入社した。順調に実績を重ねた彼女が、三年前に栄転で関西支社へと赴任してからは、滅多に会えなくなっていた。
実家が東京にあって、役員も望める女性なので、将来本社に復帰するのは間違いない。でも、幹部候補として他の支社にも転勤の予定だったので、友人であるかすみには嬉しい知らせだ。
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