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「うん。無理言って、本社に戻るの認めてもらったの」
「無理?」
普通の要求程度で本社復帰が認められるとは思えないので、かすみは首を傾げた。
「実は父親が身体悪くして……それほど心配するほどでもないんだけどね。でも、母親が不安がっちゃって。それで、東京に戻りたいって部長に頼み込んだの。なんとか通って母親も安心してる」
花野は一人娘だ。
「そっか……でも、こっちに戻れて良かったね。で、おじさん、どこが悪いの?」
かすみは、花野の本社復帰が嬉しくて簡単に訊いていた。
「肝臓が悪くて……放っとくとがんになるから気をつけろって。まったく不摂生なのよね。これからは食事制限あるらしくて母親も大変なのよ。それがあって、近くに戻りたいってね」
説明を聞いたかすみは息を飲んだ。確認しなければ良かったと後悔した。
顔色の悪くなったかすみを花野が不安そうに見てきた。
「どうしたの、かすみ」
声を掛けられて、ハッとしたかすみは作った笑顔で向き直った。
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