3250人が本棚に入れています
本棚に追加
(仕方ないよね、今日だけだから……)
沈む気持ちで、かすみは直弥へ休憩時間に用件を送った。直弥からは、ゆっくり友達と楽しんできてという返事が届いて、少し傷ついた気持ちになった。
優しい直弥は、きっとかすみが、自分の時間をすべて彼のために費やすのが嫌なのだろう。分かっていても、かすみが彼といたかった。
治療で良くなる。きっと助かる。
そう信じているけれど、それは、かすみの根拠のない願いだ。実際、直弥の状態はまったく楽観できないのは理解していた。
それでも、微かな望みにかすみはすがりたかった。
奇跡を紹介する番組で時々見る、がんの末期と宣告されながら、強い気持ちや家族の愛で助かった人の話。直弥に、その奇跡が降りてほしかった。
そう願っているけれど、時間を無駄にはできない。
かすみは、すべてを犠牲にしているとは思わないけれど、直弥の考えが違うのも分かる。
かすみが友人と会うと聞いて、きっと直弥は安心したはずだ。かすみが、自分の時間を楽しんでいると。彼女は、今はまったく望んでいないのに……
最初のコメントを投稿しよう!