第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 ***  「破局したんだってね」  会社からほど近い日本料理店。関西支社の人たちの行きつけの店だと聞いた。個室に入るなり、彼女はかすみに単刀直入に確認してきた。  「うん……完全に終わったのは十日くらい前だけど……」  「は?  聞いたのは、二か月近く前だってことだけど。()めてたの?」  「まぁね……」  破局を同僚に話したのは、その少し後だった。花野が聞いたことは正しい。確かにその頃に別れ話をされている。思わない事態になったことを無視すれば……  「二股でどうして揉めるの。もしかして未練とか?  やめなって。まぁ、終わったっていうんだからいいけど」  花野の勘違いをかすみは訂正した。  「未練があって復縁を望んだのは向こうなの。私じゃなくて」  「はぁ?  二股しときながら復縁?冗談としては面白いけど、本気ならぶん殴るわ」  本当に殴りそうな花野を見て、かすみは苦笑した。
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