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かすみは料理に手を付けた。ヒラメの煮凝りが美味しい。
作ったら直弥は喜ぶだろうかと考えた。魚なら肝臓にも大丈夫そうに思える。
「同情とは思ってないけど、これから大丈夫なの?治療きつくない?見てるかすみが辛くなりそうだけど。
弱いとは思ってないけど、相手の苦しむ姿見て耐えられる?」
花野の言葉は正しい。かすみも不安だった。
思っていることを指摘された彼女は答えられなかった。でも、離れたくない。せめぎ合う感情は、かすみに沈黙を選ばせた。
「分かってる、言いたいこと……」
沈黙が流れた後に、かすみはぽつりと言った。諦めと断ち切れない感情を含む声を聞く花野は黙っていた。
「直弥さんも悩んでるのが分かるの。一緒にいたいって思ってくれてるけど、最期まで傍にいさせるのはって。
でも、もう無理なの。戻れない。知らなかった時に戻れないんだから、離れるなんてできないの」
「そこまで好きなの?」
静かな声にかすみは頷いた。
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