第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 「本当に子供が出来ててほしい。そうなったら、直弥さん、私と一緒にいるの悩まないし治療だってもっと進むようになる。  それに、私、彼の子供が欲しい」  かすみの言葉を聞いて、花野は表情を改めてから返してきた。  「分かった。もう言わないよ。  かすみが本当に、その人の子供が欲しいなら何も言うことない。  もしかして、妊娠を利用したいのかなって、ちょっと思ったの。相手が知ったら治療頑張るかなって感じで。  でも、かすみが本当に欲しいなら、それでいいよ。出来てるといいね」  「うん、本当にそう思う……」  かすみはグラスの中のミネラルウォーターを飲んだ。妊娠に備えて、かすみはアルコールをやめていた。そこまで願っていた。
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