第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 ***  夜が遅くならないうちに、花野はかすみを家に帰した。  「(いと)しの彼のところに早く帰さないとね」  赤くなるかすみを彼女は笑った。  「東京に戻ったらランチ(おご)ってよ」  「うん、分かってる。サービスするから」  かすみは料理店を出て駅へ向かった。秋の色が濃くなっている。少しずつ寒さが増していた。  直弥の身体に響かないか、かすみは心配だった。何をしても、彼のことが最優先になっていた。  「ただいま……」  玄関で言いながら、かすみは靴を脱いで廊下を歩いた。リビングに灯りが点いているのが分かった。直弥は起きている。  早く休んでほしいけれど、待っていてくれたのは素直に嬉しいとかすみは思った。  ドアを開けると、読書をする直弥が迎えてくれた。  「ただいま、直弥さん」  「おかえり、かすみ。友達と楽しかった?」  頷いて、かすみは直弥の横に座った。彼は、本に(しおり)(はさ)むとテーブルに置いた。
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