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夜が遅くならないうちに、花野はかすみを家に帰した。
「愛しの彼のところに早く帰さないとね」
赤くなるかすみを彼女は笑った。
「東京に戻ったらランチ奢ってよ」
「うん、分かってる。サービスするから」
かすみは料理店を出て駅へ向かった。秋の色が濃くなっている。少しずつ寒さが増していた。
直弥の身体に響かないか、かすみは心配だった。何をしても、彼のことが最優先になっていた。
「ただいま……」
玄関で言いながら、かすみは靴を脱いで廊下を歩いた。リビングに灯りが点いているのが分かった。直弥は起きている。
早く休んでほしいけれど、待っていてくれたのは素直に嬉しいとかすみは思った。
ドアを開けると、読書をする直弥が迎えてくれた。
「ただいま、直弥さん」
「おかえり、かすみ。友達と楽しかった?」
頷いて、かすみは直弥の横に座った。彼は、本に栞を挟むとテーブルに置いた。
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