第三章 雨傘に隠されていた素顔

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 リビングには静かな音楽が流れている。かすみは、それほど音楽は()かない。聴いても流行している歌ばかりだ。  でも、直弥はクラシック曲を好む。リビングには、いつもピアノやヴァイオリンの曲が聴こえてくる。かすみも好きになった。流れる音楽は雨のように静かだった。  「同期で課長って、すごい女性なんじゃない?」  直弥の感心した声に、かすみは、自分が()められたような笑顔になった。  「そうなの。同期でも一番なんだ。美人で背が高くてモデルみたいだし、欠点あるのかなって感じ。  あ、完璧なのが欠点かな。結婚相手が見つからないって愚痴ってる」  聞いた直弥だけでなくて、言ったかすみも一緒に笑った。  「確かに、パーフェクトな女性は男にはちょっとハードルが高いかな。でも、かすみは気にしないで仲いいんでしょ?」  「うん、さっぱりしてて付き合いやすいよ。もう少ししたら帰ってくるから楽しみ」  「そっか。そのうち会えたらいいね」  「え……」
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