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今まで直弥は、かすみに関係する人に会いたいとは言わなかった。家族にも……自分の寿命を考えているのが分かる。でも、花野には会いたいと初めて言ってくれた。嬉しい気持ちがかすみの声を弾ませた。
「うん、花野もきっと会いたいって言うよ。楽しみだな……でも、花野を好きになったら、ちょっと困るかな」
少し情けない口調になったかすみに、直弥は笑ったまま軽くキスしてきた。
「直弥さん……」
かすみは茫然と名前を呼んだ。一緒に暮らして十日。初めてのキスだった。
「これ以上は駄目だけど、やっぱり、かすみにキスしたい。いいかい?」
「そんなこと訊かないで。もっと先まで行ってもいいのに……」
直弥は首を振ったけれどキスは続けた。かすみは直弥に抱きついた。少しでも触れ合っていたい。
一緒のベッドで寝ているけれど、直弥は決して触れてこない。ずっと寂しかった。
「抱いてくれないなら我慢する。でも、こうやって近くにいたい」
「うん、僕もかすみに触れたいよ」
その夜から二人は寄り添って眠った。軽いキスだけでも、かすみは幸せだった。
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