第1章

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 制服の女子高生。見覚えのあるマフラー。  だけど雰囲気が違った。最後に見た紗江じゃない。  あれは一年前、朋子先輩に無邪気にまとわりついていたころの紗江。  紗江がぼくに顔をむける。驚いたような嬉しそうな顔つきになり。  ぼくの頭は真っ白になる。  音が消えた。身体が震える。紗江の顔しか見えなくなる。  カフェで何があったのかとか。事件や事故にまきこまれていたのかとか。  急にいなくなるなんてとか。返事もしないなんてとか。  だけどそれは多分ぼくのせいで。いやもう絶対ぼくのせいで。  紗江とつきあっているのに、ぼくは朋子先輩のことばっかりで。  ならぼくはどうすればいいのかとか。どうすべきなのかとか──。  そういうことが、どうでもよくなる。    手をのばす。力いっぱい紗江の腕を引く。涙声になる。   「無事で、よかった」  愛とか、恋とか。よくわからない。だけど、これだけはいえる。  君がいるだけでこんなに世界は違う。  いるだけでよかったんだ。  だから。どうか。もう。どこにも。  言葉にならない思いが胸をしめつけ、ぼくは彼女を抱きしめた。 (了)
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