となりの魔法大戦

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<余談>  正直に言う。この筆者は安直なのだ。”魔法大戦”の続編を書くことになろうとは考えもせずいたくせに、今回のエブリスタの”お題”を聞いて、不意にプリンセス・ルーナちゃんたちが、東丈の家の”蔵”で暮らし始めたこと思い出して、何も考えずに”書き始める”というのだから、あきれてしまうんだよね・・と、作中の東丈少年ならば、さしずめ、こんな文句を言うところであろう。 <本題>  超常現象研究家の東丈は、ときどき、その漫画単行本を手にとって、ぱらぱらとめくるのだった。この作品の名は”魔法大戦”、原作はSF作家の平井和正、漫画は石森章太郎。どちらも、今は故人だが、今でもその業界では誰もが知っている有名な大作家である。  しかし、この作品は、日の目を見ていない。  ちょっと調べてみたが、その昔、企画はあがったが、その段階でポシャッたのである。  そうだ、この作品は、この世界には”存在しない”はずの作品なのである。  その作中のプリンセス・ルーナとは、あのトランシルバニアの超能力王女のことである。訪日で羽田空港に到着したばかりの彼女一行を、”幻魔大魔王”となのる怪物が急襲。  偶然彼女の取材を任された丈の父の新聞記者虎太郎が緊急避難先として自宅を提案。やってきた王女様と随行の一行・・といっても、本当に小さな国なので、一人侍従長のレム爺さんと、侍女のラムちゃんだけ・・は、そこで倉庫とした使われなくなっていた蔵に目をつけ、そこの二階に陣取ることにしたのだった。  なぜ蔵があるかって?あの世界大戦で東京では空襲で燃えてしまったが、東家は奇跡的にその戦火を回避できたのだ。それをいえば、この吉祥寺一帯はそのときの風向きのおかげで、あまり燃えない奇跡の地域で、そこにあった昔からの下級の江戸幕府の役人だった東家は、江戸時代の構えのまま生き延びたのからである。  そんな幕府の幹部ではなかったが、由比正雪の反乱のからの一連の騒動を静めるのに功労があったからと、地位は上がらなかったが、それなりの褒美をもらっていたらしい。奉行所の同心というが、どうもそれは表向きで、代々幕府の密偵、隠密同心をやっていたという話もあるが、丈の代くらいになると、何も証拠のない神話のようなものだ。
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