となりの魔法大戦

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 ”幻魔大魔王”の尖兵たちが、その大秘密に気がついたとは思えないが、東京吉祥寺あたりに”何かがある”と怪しんで、その攻撃を集中し・・丈たちGENKENのメンバーがそれを迎え撃つ・・それが、この”魔法大戦”という漫画の物語の骨子である。  実際がところ、東丈の実家はこのマンション事務所兼住居近くの吉祥寺にあり、江戸の昔からの下級の幕府役人の家系、家には納屋があるのだ。そして、彼は丈、年の離れた姉は三千子、まさに、漫画が描いたように、だ。だが、東丈の亡き父親の名は虎太郎ではない。竜太郎だ。  まして、あの納屋に、お仕置きで押し込まれたこともあるが・・フレイアに声をかけられたこともなければ、その地下になぞの宇宙船が埋もれているなんて話も、噂にしても耳にしたことがない。  姉の三千子も知らない。まして、左遷先のウイングシティから晴れて戻ってきた姪の美惠子が知るはずもなかった。  しかし、とにかく、この”あるはずのない”漫画本は、丈の手元にあるのだ。  それは、このマンガ本を提供してくれた”ドク・タイガー”は、この世界と平行して存在するいくつもの”別の世界”のひとつで刊行されたものだというのだ。  理論物理学で理論上研究されている”平行宇宙”理論のひとつらしいが。あくまでも、理論にしか過ぎない。理論に過ぎないが、その漫画は、確かに丈の手の中にある。  超常現象研究家でありながら、しかし、それを発表できない。まず、それがフェイク、でっちあげではない客観的証拠を挙げなければならないからだ。これは、悪魔の証明というしかないものだったのだ。  これが東丈が、その昔この仕事を始めるに当たって夢見ていたように大学教授が扱う”科学”であれば検証の余地はあっただろうが、結局はマスコミのオカルト評論家でこの人生が終わってしまいそうなのだ。そんな、怪しげな評論家が”これはホンモノです”といって出そうものなら、嘘八百といわれるのが関の山ではないか。そうなるのが日の目を見るより明らか。  しかし、丈は、誰よりもこれが本物であることを知っている。”平行宇宙”は、本当にあるのだ。  あるいは”宇宙人”とみなされている存在の中、特に地球人そっくりとされるものたちはこの”平行宇宙”の存在かもしれない。
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