2人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は智一から、同じように行方不明になった男性が行方不明中の記憶をなくして帰ってきたことを聞いた旨を話し、状況が似ているからそう推測したと説明した。
説明を終えると二人の刑事は若干の疑惑を持ちながらも、納得した顔で「そうでしたか。」とだけ言った。
「もう一点、お訊ねしたいことがあります。」と、篠崎はペンを顔の横に縦に持って数字の1のようにして言った。
「三日前、先週の木曜日は何をされていましたか。」
先ほどまでメモをとりながら話を聞いていた二人だが、今はじっとこちらを見ている。重要な質問であることが伺い知れた。
「平日だったので普段通り学校に行って、帰ったのはたしか四時から五時の間だったと思います。」
「そのあとは?」
「家にいました。夕飯が七時半ごろで、寝たのは十時過ぎだったと思います。いつも通りでした。」
特に憚られることもないので、ありのままをこたえた。
俺の答えには特に反応を示さず、そうですか、とだけ篠崎は言った。もう一人はなにやらまたメモをとっていた。
その日の大きな出来事はそれっきりで、自室に戻ってすぐに智一に連絡した。
"うちにも警察が来た。少年の発見当時のことを聞かれたんだけど、どう答えた?"
気がかりであったことを聞いた。今さら聞いたところで仕方ないが、警察が家にくるという異常な事態に気持ちが高ぶっているためか、智一と情報を共有して気持ちを落ち着かせたかった。
返信はすぐに来た。
"人が倒れていることに気が動転してよく覚えてないってこたえた。不法侵入したとは言いづらかったしね。マルオはどうした?"
智一の対応を聞いて、うまい対応だなと内心で感心しながら次のように返信した。
"道路側の荷物にもたれるようにたおれてたってこたえたよ。大丈夫かな?雅人にも教えておいた方がいいよね?"
メッセージを取り合うなかで様々な考えが頭をよぎる。
その考えのいずれもが、ただの噂としか思っていなかった現象の原因を探求するものだった。俺は自分が、この物騒な現象を怖がりつつも、虜になっていることに気がついた。
最初のコメントを投稿しよう!