水面

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 SNSのタイムラインを遡っているふりをしながら、くだらない自尊心のために思いを巡らせていると、背後で自転車の止まる音がした。 「久しぶり、二人とも。」本日の参加者の最後の一人、小野雅人が登場した。彼の顔色はもともと良い方ではなく、青白い印象を受ける。更に運動を好まない上、偏食と少食のため手足が細く、日差しが少なくなる冬の間はややもすれば宇宙人のグレイマンと見間違える。今日は初夏の日差しによってメラニン色素を多少取り戻したとみえて、肌も少しは人間的な色をしている。表情はいつもより柔らかく、再会を喜んでいるようだった。  雅人は俺と智一の小学生からの共通の友達であり、四月からは違う高校に通っている。突飛でくだらないことを思いつく天才であり、勉強もできるようで高校も市内ではそれなりに名の通った学校に通っている。しかし少々オタク気質なところがあったり独特な性格の持ち主であるため周りに馴染めないことが多い。  雅人と会うのは卒業式以来である。こうして三人で集まるのも卒業式以来だろうか。高校に入学してから今まで、同じ高校に通う智一とは家が近いこともあり遊ぶ機会もあったが、雅人とは音信不通であった。新しい環境で共通の趣味を持つ友人でも見つけたかと寂しく思っていた矢先、向こうから連絡があり久しぶりに遊ぼうということになった。俺たちで集まるときは珍しいことではないが、何をして遊ぶかは集合してから決めることになっていた。 「やあ、まさと。それで今日は何をしようか。」俺も雅人の表情につられて微笑んだ。 「今日は少し暑いみたいだし、とりあえず俺ん家は?ゲームでもしながら近況報告しよ。」 「いいね。まさとん家久しぶりだなー」と智一が賛成し、俺も特に異論はなかったので雅人の家に場所を移すことになった。
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