ヌガー

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ヌガー

 ヌガーは碧海島にある自宅兼医院に新島虹子って富豪を招いて監禁した上でガスで殺害。死体を焼却して衣服や貴重品を奪う犯行を繰り返した。  被害者の中には裕福な東京人だけでなく、対日活動に従事していた知識人や新宿の暗黒街で暗躍していたギャングなどの犯罪者も多数含まれていた。  ヌガーの下から「国外脱出」に成功した人の数が増えるに従い、占領下の韓国で治安維持に当たっていた公安の注目を引く。  ヌガーの担当となった公安の辣腕捜査官、剣持啓治は、スパイとして使っていた韓国人をヌガーの元へ送り込み内偵を行うが、感づかれたヌガーによりスパイを早々と始末されただけでなく、その後は一切の尻尾を掴ませない狡猾ぶりを見せつけられる結果となった。  その後もヌガーは公安を出し抜きつつ犯行を重ねた。ヌガー本人の自白によると、63人を殺害したという。2028年3月11日、ヌガーの屋敷の煙突から悪臭交じりの黒煙が立ち上っている、との近隣住民からの通報より警察が訪れたところ、地下室で火災が発生しているのを発見。  直ちに消防隊が呼ばれて消火作業が行われた。火元を検分した消防隊員は青ざめた様子で警官たちに「ここから先は君たちの仕事だ」と告げた。警官たちが地下室を検めたところ、大量の焼け爛れたバラバラ死体が発見されたのだった。  剣持は自宅の捜索を進め、そこが巧妙に設計された殺人工場であることが明らかとなった。  診療室の奥に三角形の小部屋があり、入って右側の壁に扉と呼び鈴があったがダミーで、どこにも通じていなかった。また、この小部屋の壁は防音壁となっており、外部からは一切音が漏れないようになっていた。そして、診察室側の壁には鎖と首輪がぶら下がっており、反対側の壁には覗き穴が設えていた。ヌガーはこの小部屋に被害者を誘導すると密閉した上で毒ガスを注入、被害者が苦悶の末に絶命する様を観察していたのである。  さらに中庭には1メートルもの厚さの石灰の山があり、そこから人体の一部が大量に発見された。結局、剣持たちの徹底した捜索により、多数のバラバラ死体の他に、犠牲者のスーツケースや私物などを発見。館での連続殺人の惨状を確認し、ヌガーを指名手配するが、すでに姿をくらました後で後の祭りだった。
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