ドロップス

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ドロップス

 佐久間は自分の無知さに恥じた。  ロリポップってのはペロペロキャンディーのことだったんだ。  佐久間は潜入捜査官だ。  犯罪組織キャンディは碧海島を拠点に活動している。  セミナーハウスで勉強をした。  講師は校内で教え子を犯したゴミみたいな奴だ。ぷっちょって呼ばれている。  ぶくぶく太っていて脂汗が気持ちが悪い。  モニターに犯人の顔が映し出される。 「さぁ、ぷっちょ先生の特別ゼミだよ?」  ソウル20人連続殺人事件は、2003年9月から2004年7月にかけて大韓民国ソウル特別市で発生した連続殺人事件だ。 「犯人の名前は誰だと思いますか?先生と目があった人は答えてもらうよ?」  ぷっちょの視線が佐久間に向けられた。 「はい、ドロップスくん」 「六星竜一?」 「ははは、『異人館村殺人事件』か?アニメじゃないんだぜ?」  佐久間は学業そっちのけで『金田一少年の事件簿』を見ていた。だから45になっても巡査部長だ。 「あとで資料室でしっかり調べておくこと」  ぷっちょは事件の内容を話した。 「2003年9月24日、ソウル特別市江南区新沙洞で大学名誉教授夫妻が殺害された。その後、2004年7月に犯人が逮捕されるまで、主に富裕層の高齢者や風俗嬢の合計20人が殺害された。みんなも、彼を見習ってたっくさん殺してくださいね?」  佐久間はトイレでメモ帳を読んでいた。ぷっちょの家庭環境が記されてある。  ぷっちょは1997年生まれだ。  八丈島出身。やや内気な性格だったが、ごく普通の子供だったという。しかし、12歳のころから母親が情緒不安定となり、「浮気をしている」「麻薬をやってる」「私に毒を盛っている」などと夫をなじるようになってから、両親は次第に不仲になり、家庭内で夫婦の諍いが絶えなくなった。やがて本人も居心地の悪さから、おかしくなり、高校へ通う頃になると酒におぼれ、マリファナを常用するようになり、身なりに構わなくなり何日も風呂に入らず悪臭を漂わせて同級生たちを不気味がらせるようになる。  何とか高校を卒業したぷっちょは、何度か職を転々とするが長続きせず、大学にも入学するが結局学業も半ばで放棄し、離婚した両親の間を何度も行ったり来たりするようになった。青年期、彼はアルコール使用障害を患っているだけでなく長期にわたり薬物中毒に陥っていた上に、「怒りを抑え込んだことによる精神的問題」から勃起不全にも苦しめられていた。
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