タフィ

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タフィ

 タフィが犯した最初の殺人は、彼が八神刑務所を釈放されて間もない2014年6月28日に起こった。  そのときはまだ15歳だった。  タフィは、熊野市のアパートの一室へ押し入り、そこの住人である79歳の女性をレイプした上、めった切りにして殺害したのである。遺体は激しく傷つけられており、首が皮一枚で繋がっているようなありさまだった。また、窓と網戸からは犯人のものと思われる指紋が検出されていたが、この時はタフィに結び付かなかった。  第2の犯行は、それから9ヶ月後の2015年3月17日深夜、七里御浜近郊のアパートを物色していたタフィは、ガレージに車を入れて自分の部屋に戻ろうとした女性を拳銃で撃ち倒した(弾丸は車のキーに当たり、彼女は奇跡的に助かった)後、彼女の部屋へ押し入り、キッチンでルームメイトである34歳の女性会社員の頭部を撃ち抜いた。  その後、射殺したはずの女性と出くわしたタフィは、命乞いする彼女を無視して立ち去った。この事件では生存者にはっきりと顔を目撃されているだけでなく、タフィが被っていた広島カープの野球帽が発見されている。  タフィは、七里御浜での凶行から1時間もしないうちに、第3の殺人を犯している。新鹿海水浴場で次の獲物を漁っていた彼は、東京出身の観光客(30歳)が運転するシヴォレーを止めさせ、彼女を引きずり出すと数発打ち込んだのだった。救急車が呼ばれたものの、到着を待たずして息を引き取っている。  3月17日の凶行から10日後の3月27日、津市の中流住宅街でイタリアン・レストランのオーナーの64歳の男性と、その妻で44歳の女性弁護士が惨殺されているのを帰宅した息子が発見する。直接の死因は射殺で、夫は書斎のソファで、妻は全裸で寝室のベッドでそれぞれ絶命していたが、とりわけ妻の遺体の損壊が激しく、生きたまま両目をえぐられていた。  ここでも数多くの手がかりを残しており、これらの証拠から、捜査に当たった手塚鉄矢警部補は、新たな連続殺人犯が出現したのではないかと危惧し始めた。ただし、この時点では、3月17日の双方の犯行を最初の事件とみなしていたため、最初の老婦人殺害を一連の連続殺人と関連付けるまでにはもう少しの時間が必要であった。  また、マスコミはこの連続殺人者に「熊野の悪魔」という異名を与えた。  2028年12月29日、タフィの愛する女が何者かに射殺された。女は庭の手入れをしていた。
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