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慎一郎とキス以上の関係になったのは、彼が店長として職場異動する少し前のこと。
初めての箱根温泉1泊旅行。
落ち着いた風情の和洋室。
部屋付き露天風呂。
最上級の寝心地を謳っているダブルベッド。
それまで「男前な女子」扱いしかされずろくに恋愛経験もなかった彼女は、覚悟を決めるまでに1年ちかくの時間を費やした。
枕元の照明を消した慎一郎に触れられた瞬間、巴は緊張のあまり身体をこわばらせる。
ゼロ距離の位置に浴衣姿の彼がいるなんて心臓に悪い。
初めての時ってどのぐらい痛いんだろう。
胸ちっちゃいの、ガッカリされないかな。
・・・っていうか、ムリ!やっぱりムリムリムリ!
「あのっ・・・慎一郎さん、ちょっと待ってっ・・・」
今更ながらおじけづいた巴は、必死に手を振りほどこうとしたが、慎一郎に押し倒され動きを封じられる。
少し余裕のない表情。
伝わってくる熱。
「いくら俺でも、ここまで来て自制しろというのは無理なんだが」
そう言いながらも、初めから終わりまでずっと優しかったのはおぼろげに覚えている。
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