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ここで慎一郎は、先刻から巴がずっと黙っている事にようやく気づいた。
彼女の様子を窺ってみると、硬い表情で何か考え込んでいるようだ。
おそらく大丈夫、で放っておいていいはずがない。
「・・・・・・巴」
初めて一緒に迎えた朝、彼女の寝顔を眺めながら心に決めた。
性別、年の差、性格、趣味嗜好。
彼女との関係を深める道を選んだ以上は、せめて二人の間にある隔たりを埋める努力は惜しむまいと。
「・・・ふあっ、ひゃい」
何故か巴は噛んでいたが、そこには触れずに言葉を続ける。
「先月は会えなくて申し訳なかった」
「慎一郎さんが謝る必要ないですよう。むしろ謝らないといけないのはこっちの方で・・・」
巴はひとしきりわたわたした後、お詫びの角度45度で頭を下げた。
「私と仕事どっちが大事?なんて面倒くさい事聞いてすみませんでしたあっ」
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