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これでは「私と仕事どっちが大事なんですか!?」と言われても仕方ない。
(無意識に甘えていたのかも知れないな)
元来、慎一郎は他人の心の機微に疎い。
特に「言葉にしなくても察してくれ」という無言の圧力が苦手だ。
6才年下の巴は、彼の話をよく聴いてくれ、要望はきちんと言葉にしてくれる。
時々、物わかりが良すぎるんじゃないかと感じるほどに。
電話を切られる直前、消え入りそうな声で「すみませんでした」と言うのが聞こえた。
自分の昇進を一緒に喜んでくれた彼女のことだ。
わずらわせるような事を言ってしまったと、今ごろ落ち込んでいるに違いない。
時間は23時ちょっと過ぎ。
今日のうちに電話して、フォローしておいた方がいい。
そして改めてデート出来る日程を確認しておこう。
そう判断して、慎一郎はもう一度彼女に電話をかけた。
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