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それから、十年。美しく育った女王様の話を聞いて、ひとりの他国の王子様が現れました。
姿を見た王子様と女王様は、一目で恋に落ちました。
求婚者には、身分を問わず女王様自らの料理でもてなすのが決まり。
しかし、王子様は出された食事をとることもなく言いました。
ここにはいられないが、女王様に自分の国のお妃様になって欲しい、と。
女王様の心は揺れました。料理を食べてもらえないけれども、こんなにも好きならば、一緒に別の国に行っても良いのではと、思い始めました。
しかし、女王様が他の国に行ってしまっては、この国の王族が誰もいなくなってしまいます。
民は皆知っていました。
そうしたら、この国は滅んでしまう。
王子様はいつも出される料理を固辞しても、女王様の元へ通い続けます。そして、女王様の心は傾くばかり。
しかし、不思議なことに家臣ががいくら勧めても、国の約束でもある料理には、王子様は手を付けようとしないのです。
このまま女王様がいなくなってしまったら、いつも配ってもらえるお手製のお菓子が食べられなくなってしまう、そう強く危惧する民も現れました。
そうして、ついに民は決めたのです。
女王様には内密に、不安に染まった国中が団結して、民はこっそり王子様を殺して、人の目が及ばない地面の中に埋めました。
民は、女王様の為ではなく、自分達の為に。女王様を裏切ったのです。
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