女王様のお菓子

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女王様のお菓子

 むかしむかし、  王様と女王様との間に、ひとりのお姫様が生まれました。  この国で王族に生まれるのは、必ず女の子と決まっており、その誕生は皆からたいへん喜ばれました。  それからしばらく、  早くして、王様とお妃様が亡くなりました。  それでも、まだ若いお姫様は今際の際に母から教わった国の習わしをその胸に、女王様としてその国を治めることになりました。  民は日々を幸せそうに働き平和に眠る、そんな穏やかな暮らしを紡いでいます。  女王様となったお姫様は、習わしに沿いって、そんな民を心から労りました。  決まった日に、女王様は城の民に手料理を振る舞います。  器用ではないからと、女王様は恥ずかしがって料理を作る姿を見せませんでしたが、それでも他に決まった日には、女王様は必ず街まで出ては大量のお菓子を配りました。  女王様のお菓子は、全ての民に行き渡る量を用意しても、どれも民が波のように押し寄せて、あっという間になくなりました。  女王様も先代の女王様も、ずっとこの習わしをを繰り返してきたのです。  今までずっと、女王様の作ったお菓子を食べ続ければ、ずっと幸福に健康でいられると。そんなジンクスが民の心を温め続けてきたのです。  そして、民は例外なく女王様のお菓子に感謝して、次にまた姿を見せてくれる時まで、何よりもの心の支えにして生きていくのです。  こうして、民と女王様はお互いに受けた恩恵を返し合う存在として、今までずっと慈しみあって国を支えてきたのです。
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