立崎 流伽の場合。

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 プロレスって16年間生きてきて、今まで一番馴染みのないスポーツじゃん。  いや、スポーツなの? 鉄パイプとか折り畳みの椅子で殴ったりとか流血とか?  乱暴で怖いイメージしかない。  もしかして私の相手って、2メートルあって暴れ牛を一発で仕留めちゃうような筋肉マッチョの人?  指名できるような地位があって、私に断る権利はあっても、お見合い自体は義務で……。  仲人さんが体育倉庫のドアを開けている間、昨日読んだ少女漫画が走馬灯のように頭の中に浮かんだ。  甘酸っぱくて体中がピリピリするような、恋愛がしたかった。  好きで、好きで、どんな困難にも二人で立ち向かっていくような、そんなイケメンな人が良かった。  ゆらゆらと視線が揺れて、理想の恋愛で心が押しつぶされそうになった。 「流伽。俺だよ、流伽」
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