立崎 流伽の場合。

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 どうして私たちには法律が恋愛を阻むの。  人口が八千万人を切った時点で、もっと子どもを育てる環境を整えばよかったのに。  それに、今だって機械の発達で人口は減っても文明や社会はちゃんと回ってる。 「その昔、海外では一人っ子対策もしていたらしいわ。日本は真逆で、今のままでは百年後には三千万人になるんじゃないかって」 「……亜里沙先輩は」  重い口を開けた一河は、車の窓に人差し指でぐるぐると円を書く。 「亜里沙先輩は、そうして人が減っていき最後の一人になれば解放されるのかしらって言ってたよ」 「ええええ。アダムとイブみたいに残るなら二人が良い!」 「でも人口が減ると、男女の比率も変わるって本当なのかなー」 話の話題はふわふわとどんどん確信から飛んでいき、離れていく。 皆、心のどこかで不満と不安を抱えているのに、法律が補助金で殴って殺していくんだ。 車の中で段々と無口になるころ、康河くんが目を覚まして『おやつたべたい』と第一声に行ったので少しだけ和んだ。
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