立崎 流伽の場合。

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「でも私の親も一回目のお見合いで決めたって言ってた」 「俺の親も一回目だったな。まだ恋愛結婚憧憬症候群はポピュラーじゃなかったらしいし」  と言いながら一河は少し申し訳なさそうに笑う。 「でも俺が指名されたのはこの足のせいだから」  一河は中学三年の時に子どもをかばって車の前に飛び出し、足を怪我した。  左足は完全に麻痺してしまい、右足ももう三回ぐらい手術をしているけど上手く動かないらしい。  一河を指名してきたお見合い相手は、その子どものお姉さんだと言っていた。 「でも私が一番、恋愛結婚に夢を見てるから。昨日だって昭和、平成に流行った恋愛漫画読んでて寝不足だし」 「もー。俺のメール返信しないと思ったら」  振り返った一河は、垂れている糸目を釣り上げて怒った。  ごめんねーって片手を顔の中心に立てると、『まあいつものことか』とすぐに許してくれた。
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