立崎 流伽の場合。

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「ちょっと強引な王子様と、意地悪なライバル、支えてくれる親友、理解のある親と教師、読んでてタイムスリップしたいって思ったなあ」 「……まあ時間が戻れるなら、俺ももうちょっと上手く助けたかったし」  苦笑する一河と緊張して顔をこわばらせている水咲と、不満で文句を言っている私。  恋愛漫画が遠い日の作り話に見えてしまう現状で、結婚に夢を強く抱いてしまうのは仕方がないと専門家は言う。  人間は理性がある。繁殖しやすい相手、繁殖しやすい体が丈夫な相手なんていちいち考えて好きになるわけじゃない。  相手がどんな人で好きなものは一緒かとか、どんな顔がタイプとか、知りたいことは沢山ある。 「そういえば、昭和のSF小説でも政府がお見合いさせて人間はそれに従う話があった気がするのよね。タイトル忘れちゃったけど」 「えー。じゃあ人間はこうなると予言してたの?」 「いや、小さい頃に読んだから忘れちゃった。その話、色も忘れちゃってたのよね、主人公。なんてタイトルだっけなあ」 「へえ。歩く辞書と謳われる水咲でさえ忘れてしまうことがあるのかー」
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