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「はい?」
「辛い記憶を、思い出そうとしてくれたんだな。今日は赤飯だ。朝は俺が赤飯を焚こう。今から炊けば八時にはできる!」
「八時十分からホームルームだから遅刻です」
慌ててベットから飛び上がるのに、一慶さんは小さな体、全身を使ってふるふると首を振る。
「今日の奇跡に、遅刻なんてかまわない!」
「ちょ、一慶さんっ」
「何をしている!」
私たちがベットで押し問答していたら、ブレスレットの音を聞きつけ駆け付けた仲人さんが悲鳴を上げた。
昨日、私を迎えに来てくれた人ではなく、ボディガードのようながっしりとした体つきの熊みたいな男の人だ。
「あの、すいません、私」
夢に驚いてしまって――と言おうとしたら、仲人さんは私ではなく一慶さんを羽交い絞めにした。
「な、死んじゃう! 熊が乗っかたらハムスター、死んじゃいます!」
「ハムスターに見えるかもしれんが、こいつは今、君を襲った大男だ。現行犯だ」
「襲われていません!」
「じゃあどうして、この男は全裸なんだ!?」
え?
全裸?
羽交い絞めにされたあと、床に押さえつけられた一慶さんは確かにいつも通りハムスターに見えるから服は着ていない。
いつも全裸ですよ、と言うべきか。
「誤解だ。彼女の悲鳴を聞き、風呂場から飛び出したんだ」
「え、一慶さん、本当に今、全裸なの?」
「まあ、俺の引き締まった尻は流伽だけのものだ」
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