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その日、一慶さんにメールすると「今日は遅くなる」と悲し気な電話が来たので、じゃあ私がご飯を作るよって言うと、今すぐ鳥になりたいと言っていた。
鳥じゃなくて、ハムスターなんですけどね。現状では。
カレーが鍋一杯あったのに、もう少ししか入っていなかったので、お肉が好きそうだからカツカレーにしてお野菜とスープぐらいは作ろうかな。
揚げ物は、一慶さんが『一人でやらないで!』と必死で止めるのでスーパーで買ってくることにした。
スープはちょっとおしゃれな奴をつくってみようかな。
「えっと、お洒落、スープ、美味しいで検索ッと」
「ちょっとぉ。できないなら、そう言ってよね。私だって急には無理よ」
「わ」
携帯で検索しながらエレベーターに乗り込もうとしたら、パンツスーツ姿の綺麗な女性と赤ちゃん、そしてわたわたしているたぬき腹の男性が、中で言い争っていた。
「あらごめんなさいね」
「いえ、こちらこそすいません、携帯を見ていて」
と言いつつも、首を傾げてしまいそうになった。
ここ、最上階の25階なのに、どうしてこの三人家族はエレベーターの中にいたんだろう。
「ごめんなさいね。この人が4階のボタンを押し忘れて上まで上がってきちゃったの」
四階は確か、子どもを預かってくれる施設や遊び場があったはず。
でもお見合いのリハビリ施設に結婚されている人がいるのは不思議だった。
「ねえ、このおじさん、何に見える? 人間? たぬき?」
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