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「うーん。俺は家族との交流がなく育ったから、そこらへんの経験値は欠落してるから本に頼るしかなくてさ。流伽は怖い夢を見たらどうしてたの?」
昨日のように手を繋いで(私には手のひらに乗せているつもりで)歩きながら、聞いてきたのでうーんと考えた。
「今なら携帯とかで面白い画像探して笑うとか? 子どもの頃なら親の布団に潜り込んでいたかもしれないけど今はどうかな」
「好きな人が泣いて起きた場合、恋人として抱きしめたいが今はお見合い中だし、俺は何をすればセクハラにもならずセーフなのかな」
意外にも一慶さんは結構真面目にお見合いについても私の今朝のことも真剣に考えているようだ。いつもふざけているのか、天然なのか、からかっているのか分からない言動もあるけど、やはり一慶さんは優しい性格だと思う。
「流伽のトリセツが売ってたら買うのに」
「私も一慶さんのトリセツ欲しい。でも今日は大丈夫だと思います」
手を洗ってきてくださいねと洗面所に一慶さんを押し込みながら、確信を持った言う。
「なんで?」
「一慶さんがこうやって心配してくれてるのが嬉しいから、今日は悪夢は見ません」
心に余裕がもらえたというか、嬉しくて今朝の怖い夢はハムスターの頬袋の中でつぶれて消えてしまったのだ。
「ありがとうございます。一慶さん」
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